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役に立たない銅版画

#4 推し銅版画道具

2021年11月5日

今回は”推し銅版画道具”について。

この間バイト先で「いちばん好きな道具はなんですか?」と聞かれました。その方は指貫がいちばん好きで、最近は革製品を作る友達のところで見た皮なめし道具達が気になっている、と仰っていました。初めて聞かれたのでちょっと考えましたが、銅版画で使うルーレットが好き、と言うことにしました。どの専門分野でもそれがないと仕事にならない特殊な道具があると思います。用途が限られた道具ほど値段が高くて、銅の板にぶつぶつの傷をつけるためだけの道具が8000円とかします。そんなもの誰が買うんですかね、奇妙です。

アイドルのオーディション番組を見るのが好きなので(今はLOUDを真剣に見てる)、銅版画道具の中からセンター・メインボーカル・メインダンサー・ラッパー・ビジュアルを選んで、サバイバルを勝ち抜いた道具系アイドルをつくって紹介しようと思います。グループ名は『copper≒copper』。copperは銅、由来は画材屋で売ってる銅板とホームセンターで売ってる銅板の違いが分からないことです。”Dohan工房”と悩みましたが、メンバーを増やしてプレス機やコンプレッサーも入れた方が良いので却下しました。ついでにファンネームは『ハーネミューレ』で、ハーネミューレとは刷りが失敗しにくく版画家にやさしい紙の名前です。

銅版画知ってる広く浅くアイドル好きの人にしか伝わらない、、

copper≒copper

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銅版画に必須。
いちばん最初に知る道具で、みんなニードルから銅版画に入ります。先の尖ったところで銅板の上にひいた膜をはがすように描きます。細い線や力強い線、点描など、いろいろ使えて万能です。

 

バニッシャー (メインボーカル)

湾曲したところを使って、銅の表面を滑らかに整える道具。失敗を誤魔化すときによく使います。そこにいると安心です。

 

 

 

ルーレット (メインダンサー)

ピザを切るやつをすごく小さくしたみいな道具。 先端が凸凹になっていて、転がすと銅にぶつぶつの傷がつきます。木炭で描く時みたいな感覚で使えて表現に幅が出ます。大きさは様々あり、これは一番細いものです。

 

 

 

ムーレット (ラッパー)

ゴツゴツしてるいかつい見た目。銅板に先端を押しつけて転がす事で粗い傷がつき、ゴワゴワふわふわした感じがつくれます。黒猫の絵を描く時に多用してます。

金属ハサミ (ビジュアル)

ニードル「一つ一つ紹介できなくて残念だけど、たくさんの道具達の力で銅版画が出来上がってます。みんなありがとう~ 」



オーディション番組って残酷です。才能の優劣が明確に分かり、はっきり「君はいらない」と言われるところを世界中に見られるなんて。番組に出てるのだからその時点でもう十分すごい人だと思うのですが、その中でも際立って魅力のある人はいます。圧倒的な才能を持つ人はやっぱり特別で、歌やダンスが好きでいくら頑張っても差が見えちゃう。人気とか周りとのバランスとかプロデューサーの好みとか、才能以外にもいろんな条件が噛み合った数人しか報われない現実に振り落とされそうでも、どうにか生きていくしかないオーディション参加者達に感情移入して、ゆっくり首を絞められていくような感じがします。

でも好きな事なら評価を受けるのを避けて続けていくこともできますね。アニメ「うらみちお兄さん」のきょうのうた『得手不得手』が心に沁
みます。

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薄い銅板を切るためのハサミ。私の作品は銅板をモチーフの形に切り抜いてますが、それが作品に必須かというと別にそうでもないです。でも切り抜いている方が絶対にかわいいので金属バサミを使用してます。



その他(バックダンサー・照明・音響など)

ニードル (センター)

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法 / エッチング, アクアチント

サイズ/26×18cm

制作年/2014

清里で見た変な窓枠のパターンを描きました。線と点は全部ニードルの仕事で、端っこを綺麗にするのに少しだけバニッシャーが活躍してます。ルーレットもムーレットも金属バサミも、使われていません。

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